2012年6月12日 (火)

福島第一原発からの「全員撤退」問題と確認型応答

 東京電力福島第一原発事故への対応において、原発からの「全員撤退」に関する発言の有無が問題になっている。事故当時の清水正孝東電社長は、「全員とか撤退という言葉は使っていない」と証言しているのに対して、海江田氏や当時の枝野官房長官は、清水氏との電話のやりとりから、「全員撤退」と受け止めたと証言しているようである。

 そして、私が、報道等で知る限りでは、関係者のうち、誰一人として、たとえば、「撤退というのは全員のことですか」あるいは「全員の撤退ですね」と、その時点で清水氏に確かめていなかったことが残念でならない。

 当時の対応に当たっていた誰か一人でも、〈対話法〉の原則を使って、「相手の発言に対して不審な点があった場合、想像や推測で済ましてしまわずに、その想像や推測が合っているかどうかを確かめる」という意味で、「確認型応答」を実行していれば、その後の対応は変わっていただろう。

 とは言っても、過ぎたことは変えられないが、せめて今後は、重要な決定に関る立場にある関係者全員が〈対話法〉の原則を共有することにより、コミュニケーションに起因するトラブルや事故を防いでもらいたい。

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2011年4月 5日 (火)

地震の日のこと、そして、今できること

 その日、私は、勤務している高校のカウンセラー室で、来談者を待っていました。はじめは、いつもの地震かと思い、椅子に座って静まるのを待とうとしたのですが、揺れが激しくなる一方なので、これは近いと思って廊下に出ました。しかし、いつまでたっても収まりそうにありません。そのうち、周囲で、物が落ちたり、何かが壊れるような音が聞こえ始めました。屋外に逃げるのも危険と思い、廊下の壁を背にして、静まるのを待ちました。生徒と職員は、全員、校庭に避難して無事でしたが、校舎の一部が使用できなくなってしまいました。群馬では、桐生が一番震度が大きかった(6弱)ようです。自宅は、いくつかの物が落ちて壊れた程度で、家屋は幸い無傷でした。

 翌日から、東京・福岡・広島と、連日の出張予定でしたが、急遽、すべて延期しました。当日は、地震のことよりも、その連絡に、いちばん気を遣いました。出張が延期になったので、翌々日、桐生駅構内の市民活動推進センターで開かれた「対話の会」(主宰:浅野)に参加できました。桐生駅は、だいぶ被害を受けましたが、センターは無事でした。両毛線を使って前橋から参加した人もいました。当然のことながら、話題は地震のことでしたが、親しい人との語らいは、しばしのストレス発散になりました。翌日から、計画停電などのため、両毛線が不通になりました。私は、足利短大でもカウンセラーをしていますが、ガソリン節約のため、自宅から15キロの道のりを、2週続けて自転車で出勤しました。

 私の立場では、いますぐには、被災された方への直接支援はできません。そこで、人的・物的な被害はない、あるいは少ないものの、少なからずメンタル面で影響を受けている全国の人たち(自分も含む)で支え合いたいと考え、Twitterを使って、オンライン「対話の会」を開いています。地震のあと、ひとの優しさの平均値が、少なからず上がったような気がします。この優しさを、ずっと保ち続けたいものです。

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2010年8月31日 (火)

医療過誤でも謝罪が大切

ケアネット」から配信された情報によると、医師が間違いを犯した場合には、そのミス(過誤)を認めて謝罪し、補償を申し出ることが、医療過誤訴訟の防止にたいへん有用であるということが、新たな研究によって示されたとのことです。

■参考:当ブログに、このような記事もあります。
事故への対応/謝罪の是非

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2008年10月20日 (月)

ほめる行為の効果に影響する上司と部下との関係

対話法研究所が行った研究結果を支持するような記事を見たので紹介します。

JR西日本は、福知山線脱線事故を受けて、平成18年、社内に「安全研究所」を設立しました。本日10/20、そこで行われた、人的要因が安全に与える影響についての研究成果が発表されたそうです。

研究の一つとして実施された、「効果的なほめ方・しかり方」についてのアンケート調査によると、部下が行った工夫を上司が評価した場合、業務に対する責任感が向上しますが、上司との関係が悪ければ、逆に低下するという結果が出たようです。

つまり、「上司と部下の関係が良好な状態を保ったうえでほめることが重要」だということが分かったということです。

浅野が提唱している〈対話法〉の理論によると、「ほめること」は「反応型応答」に分類されます。
そして、最近の研究によると、反応型応答は、その好感度が、相手との信頼関係など、様々な条件に左右されること、一方、「確認型応答」は、信頼関係の有無にあまり影響されずに、好感度が比較的高く保たれる傾向にあることが分かりました。

JR西日本の研究では、ほめるという行為と業務に対する責任感との関係について調査したわけですが、「ほめられる」ことに対する好感度が、業務に対する責任感に影響すると仮定するなら、浅野による研究と、ほぼ同じ結果が出たと言えるでしょう。

浅野による、この研究結果は、8月に九州で開かれた国際学会で発表されました。また、詳しいことは、間もなく刊行されるジャーナルに掲載される予定です。

■参考記事(産経新聞)「仲が悪ければほめても逆効果 JR西が上司と部下の関係を研究」はこちらです。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081020-00000538-san-soci

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2007年7月 7日 (土)

柳田邦男氏が提唱する「確認会話」と確認型応答

日本航空が、数年前に起こった相次ぐトラブルを受け、全社をあげて「確認会話」の徹底を図っていることは、以前、ブログに書いた。また、JR西日本が、尼崎での脱線事故を機に、「確認会話」の手法を社内に導入することを発表したという記事もブログで紹介した。

これらの対策が、その後、現場でどの程度徹底しているかは、私の立場からはわからないが、「確認型応答」を提唱する者として、「確認会話」には大いに感心があるので、少し調べてみた。

まず、インターネットで「確認会話」で検索すると、上位10件中の2〜3件が〈対話法〉関係のページであることに驚いた。これは、〈対話法〉が他のスキル、たとえば「確認会話」などにも応用できるということを記載してあるからだが、その程度の記述でも上位にヒットするというのは驚きである。

なぜ、この様に驚くかと言うと、そのページに「確認会話」という文字を書いたときは、「確認会話」という概念が、もっとポピュラーなものだと思っていたからである。しかし、「確認会話」について調べるにつれ、それが日本航空やJR西日本関連の記事以外ではほとんど使われていないことに驚いたのである。

そこで、私が「確認会話」についてブログで紹介した情報の元になっている文献に当たってみることにした。それが、柳田邦男氏を座長とする、日本航空の「安全アドバイザリーグループ」がまとめた「高い安全水準をもった企業としての再生に向けた提言書」である。この提言書は、冊子として2万5000部が作成され、グループ社員へ配布したそうである。私は、柳田氏らと一緒に作成に関わった人を通じて、その提言書を読む機会を得た。

「安全アドバイザリーグループ」の活動と「提言書」の内容については、日本航空のCSR報告書2006で詳しく紹介されている。
https://www.jal.com/ja/corporate/csr2006/decision/decision4.html

そして、「提言書」に、「確認会話」についての参考文献として、柳田邦男著『緊急発言 いのちへII』(講談社)が記載されていたので読んでみた。
その本には、横浜市立大学付属病院での患者取り違え手術事故の詳細な分析があり、「確認会話」に関しては、実際に医療現場で行われた会話(関係者の証言による)と、柳田氏が提言する「確認会話」を取り入れた会話の例が紹介されている。
この本によって、「確認会話」の実際を、だいぶ詳しく知ることができた。

「確認会話」とは、自分と相手の言動を互いに会話で確認し、正確を期するコミュニケーションの手法である、と柳田氏は定義している。一方、〈対話法〉における「確認型応答」は、「相手が言いたいことの要点を、相手に言葉で確かめるための応答」と定義されている。細かい表現こそ異なるが、「確認」することの重要性を強調しているという点では、共通していると考えてよさそうである。

『緊急発言 いのちへII』が発行されたのは2001年であるが、いまだに、「確認会話」が広く使われるに至っていないようである。「確認会話」と「確認型応答」、若干趣は異なるとしても、コミュニケーションの質を高めるという目的は同じである。対話法研究所としては、「確認型応答」の普及を通して、事故の予防に役立てるよう活動を続けていきたい。

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2007年3月29日 (木)

脱線事故の車掌証言にみるコミュニケーションの課題

 2005年4月に起きたJR福知山線の脱線事故(兵庫県尼崎市)で、事故車両に乗務していた車掌が応じた新聞の取材内容が公表された。

参考・引用記事:3月29日3時2分配信 毎日新聞
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070329-00000017-mai-soci

 コミュニケーションを研究している私が特に注目したのは、「事故直前に駅でオーバーランした距離の過少申告について、運転士と口裏合わせをした際、乗客への対応で車内電話を途中で切ったことについて『運転士は、(自分が)怒ったと思い、不安だったかもしれない』と語った」という部分である。

 車掌が運転士と電話で会話をしている途中で、男性客からおわび放送を求められたため、運転士との電話を切ったというのである。そのことについて、車掌は、「高見運転士は(口裏合わせの求めに自分が)怒ったと思ったのかもしれない。(切る前に)『まけるよ』とは言っておらず、不安だったかもしれない」と語っている。

 ここでは、「口裏合わせの是非」や、「列車停止装置の設置などの問題」は置いておくが、車掌が語った言葉の中には、コミュニケーションにおけるさまざまな課題が示されていると考えるので、その中のいくつかを次に示す。

○緊急時のコミュニケーションありかたの問題。
○不完全なコミュニケーションに起因する「思い込み」「誤解」などの問題。
○不完全なコミュニケーションへの対処法についての知識とスキルの習得の問題。

 コミュニケーションという観点から考えると、これらの問題が一つのきっかけとなって、大きな事故が起こってしまったと言えよう。

 そして、国土交通省航空・鉄道事故調査委員会による事実調査報告書では、運転士が車掌から指令への報告内容に気を取られていたため、ブレーキ操作が遅れた可能性があることを示唆している。

 人間の対応能力を超える事態の渦中においては、この事故における運転士や車掌でなくても、誰でも同じような状況に置かれたら、同じような対応をしてしまう可能性が高いであろう。したがって、これらの事故への対応を、個人の責任や人災というレベルで終わりにしてしまうのではなく、どのようにすれば今後に活かせるのかを考え、実行していくことが求められている。
 そして、これらの課題に対して少しでも実効性のある具体的な改善を推し進めたいとの思いで、私は〈対話法〉の普及を提唱しているのである。

 話を戻そう。
 2年近くたっても事故の遺族らに謝罪していない点について、車掌は、「謝りたい気持ちでいっぱいだったが、事故を防げなかったことをうまく説明できるかわからず、そのうち外で人に会うことさえ怖くなってしまった」と述べている。

 この車掌に限らないことであろうが、一般論として、大きな事故の前後の状況や、その時、どのようなことを考え、どのような判断をしたのかということを客観的に語ることは難しい。
 大きな死亡事故の場合は、それに加えて、遺族や負傷者から責められても仕方のない責任のある立場にある者としては、それらの人たちと向かい合って、きちんと謝罪できるだけの精神力をもつことは常人では難しいことであろう。

 このような場においては、感情的な発言のやりとりになってしまうことが多い。そして、それによって、双方が傷ついてしまう可能性が高いのである。これが二次被害である。
 特別なコーディネーターがいない状況で、普段の会話で行なっているように、お互いが自分の言いたいことだけを言い合うだけでは、より傷を深くしてしまう可能性が高いのである。

 このような場において、少しでも冷静に、意義のある話し合いをするためには、原則として、双方が相手の言い分をよくきいて(傾聴)、自分の理解した内容が合っているかどうかを相手に確かめて(確認型応答)、それが合っていたことが確認されてはじめて、自分が言いたいことを言う(反応型応答)というプロセスを踏むことが重要なのである。

 この方法に近いことは、これまでにも、専門家による、さまざまな相談、調停、紛争解決の場面で実践されてきたことではあるが、一般の人が使える「簡略化したスキル」として明文化したのは、〈対話法〉が初めてのことである。

 ところで、日本航空やJR西日本が、一連のトラブルや事故の対策の一つとして、社内での「確認会話」を導入したという報道後、これと関連する「確認型応答」を提唱する対話法研究所のホームページへのアクセス数が増えている。

 これまでも、私たちは無意識あるいは意識的に「確認」をしていたのであるが、今後は、「より意識的に」確認をするスキルと習慣を身に付けることが、コミュニケーションの不全に起因するトラブルや事故を防ぐ第一歩であると考える。

 もちろん、コミュニケーションの改善だけであらゆるトラブルや事故を防ぐことは不可能である。また、人間にはミスやエラーがつきものであるから、完全なコミュニケーションというものもあり得ない。その点は、フェイルセーフ機能などのハードウエアの改善や、組織改革や社員研修の充実など、さまざまな改善が必要である。
 しかし、忘れてならないことは、これらの改善をする全てのプロセスにおいて、関係者相互の「コミュニケーションの質」が結果を左右するということである。

 対話法研究所としては、コミュニケーションの改善によって防止できるトラブルや事故を一つでも少なくするために、コミュニケーションにおいて重要な役割を果たす「確認型応答」の有効性をアピールし続けていきたい。

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2006年12月22日 (金)

JR西日本も「確認会話」を導入

2005年4月に起きた尼崎での脱線事故を機に、JR西日本は「安全諮問委員会」を設置しました。
そして、今年(2006年)の11月、委員からの提言を受けて、「確認会話」という手法を社内に導入することが発表されました。
「確認会話」というのは、明確な指示や返答を、より意識的に行うことを目的としています。
「確認型応答」を提唱する対話法研究所としても、この「確認会話」の実践と効果に期待しています。
なお、「確認会話」は、すでに日本航空でも導入されています。


【参考記事】

日経ネット関西版から
連絡ミス防止へ「確認会話」導入

「日本航空」のサイトから
日本航空グループにおけるヒューマンエラー防止にかかわる改善策について

当ブログ内にも、関連記事があります。カテゴリー「事故」で表示されます。
 

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2006年10月31日 (火)

「直江津捕虜収容所」跡地を訪ねて

 新潟県上越市には、〈対話法〉の普及に尽力している仲間が大勢いる。

 昨年11月、新潟市で開かれた「日本コミュニケーション学会・東北支部」の研究大会に、〈対話法〉ワークショップのファシリテータとして招かれた。その翌日、「上越〈対話法〉研究会」の仲間の案内で、直江津捕虜収容所跡地にある「平和記念公園」に立ち寄った。

 太平洋戦争の開戦から1年後の昭和17年12月に、直江津捕虜収容所(東京俘虜収容所第4分所)が設置され、オーストラリア兵をはじめとする連合軍の捕虜が収容され、最大で700人余りの捕虜が近隣の工場での労働を強いられていたということである。
 その後、戦局の悪化によって、捕虜に支給するための食料や医療品が不足するなか、昭和18年に異常寒波が襲来し、厳しい冬を越すことができなかった60人以上の捕虜が、栄養失調や病気によって死亡するという悲惨な出来事が起こってしまったのである。

 昭和20年8月15日に日本は敗戦をむかえたが、その後、日本に進駐してきた連合軍が戦争犯罪を追及するなかで、元直江津捕虜収容所の看守や軍属などの職員も容疑者として逮捕された。そして、60人以上の捕虜を死亡させたという罪で、看守のうち8名が処刑されたのである。

 この、さらに不幸な結末に至った要因の一つとして特に私の印象に残ったのが、当時の捕虜による証言である。
 たとえば、看守が捕虜の脚気の治療としてお灸をしたことが「体に火を押し付けられた」と証言され、戦時中の食糧難の中で、捕虜のためにと必死になって調達し食事に出したゴボウが、「木の根っこを食べさせられた」とされ、戦犯の証拠とされてしまったのである。

 日本と西洋の文化や風習の違いに起因するこれらの「誤解」が、直江津捕虜収容所の戦争犯罪容疑の証拠として採用されたという歴史的事実は、「誤解を防ぐコミュニケーション」を提唱する私の心に強く残った。

 現在、直江津捕虜収容所の跡地は公園となっており、敷地内には当時の資料を展示する資料館がある。また、平和のモニュメントと石碑が建立されている。
 さらに、平和を願う「上越日豪協会」などが中心となり、市民レベルでオーストラリアとの交流が続けられている。

■参考になるページ
「ささやかな国際交流のぺえじ」

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2006年9月29日 (金)

「JR東日本総合研修センター」訪問

■お知らせ:これまで、ブログ「カウンセリングと対話法を語る」に書いてきた〈対話法〉についての記事は、「対話法入門講座」に移転しました。

9月26日に、私も会員になっているNPO法人「失敗学会」のメンバーと「JR東日本総合研修センター」を訪問しました。福島県・新白河駅からバスで10分くらいの場所にあります。

このセンターは、社員の研修のために設置されたものです。その中に、今回の訪問の主目的である「事故の歴史展示館」があります。「この施設は、過去の事故を忘れることなく、尊い犠牲の上に得られた貴重な体験として大切に引き継ぎ、安全に対する基本姿勢である『事故から学ぶ』ことを目的」(「事故の歴史展示館」パンフレットから引用)として平成14年に開設されました。

そこでは、これまでに起こった大きな鉄道事故(追突、脱線、感電、災害、列車火災など)の概要と対策が、展示パネル、ビデオ、模型などを使って紹介されています。

私は、特に、コミュニケーション・エラーが関った事故に関心がありました。その一つの例として、保線関係者のちょっとした連絡ミスや確認忘れなどが、悲惨な死亡事故につながった事例が紹介されていました。

私は、〈対話法〉を通して、「確認の大切さ」を提唱していますが、「いくら確認をしても、それだけでは防げない事故」や「確認さえ忘れてしまう状況」があることを、実際に起こった「事故の記録」を通して改めて知ることができました。

コミュニケーション・エラーを完全になくすことはできません。ですから、これらの事故を防ぐには、たとえば「自動列車停止装置(ATS)」などのようなメカニズムを使った対策を講じる必要があるわけです。

そして重要なことは、「確認という行為」が全く無力なわけではないということです。日常業務における「ヒヤリ、ハッと」体験を関係者に報告し、その体験をメンバー間で共有しやすい環境をつくるには、「確認型応答」を中心とする〈対話法〉の原則が有効だからです。

要するに、「確認」と「メカニズム」を適切なバランスで併用することが、事故を防ぐ最良の方法なのでしょう。

なお、NPO法人「失敗学会」では、分科会の 『失敗体験ネットワーク』のメンバーが全国の失敗体験に関連する施設を調査して、「失敗体験施設名鑑」として情報をデータベース化していますのでご覧下さい。

参考記事:
事故とコミュニケーション
確認はヒューマンエラーへの対応策
危険性を指摘する発言が許される環境
  

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2006年8月18日 (金)

危険性を指摘する発言が許される環境

近ごろ、「関係者がもう少し想像力を働かせていれば起こらなかったかも知れない事故」が目立っている。

こんなことを考えていたら、今日(8/18)の東京新聞・朝刊の「言いたい放談」欄で、「日本人は『想像力』欠落か」と題して、演出家の鴨下信一氏が、次のようなことを書いていた。

たとえば、
「川に橋がかかり送電線が渡っていることを、川で働く〈ふつうの想像力〉を持つ人間が知らないはずがない」
「幼児を殴れば死ぬかも知れない、大勢で殴る蹴るを続ければ殺してしまうだろう、こう思う〈ふつうの想像力〉を日本人はなくしてしまったらしい」
と書かれている。

プールの吸排水口のふたが針金だけで止められていれば、錆びて外れたときに吸い込まれる人が出る。ガス瞬間湯沸かし器を応急修理したときのバイパス配線を放置すれば、さらに重大な故障が発生したときに安全装置が働かない可能性がある。
最近起こったこれらの事故は、鴨下氏が言う〈ふつうの想像力〉があれば、事前に察知できた可能性は高いだろう。

ここからは一般論になるが、この種の事故にみられる企業や個人の責任問題とは別に、人間としての心理的な要因を考えてみたい。
〈ふつうの想像力〉が大切であるということに加えて、ここで指摘したいのは、人間の中にある「たぶん大丈夫だろう」という意識である。このような先入観や思い込みのことを、心理学では「正常性バイアス」と呼んでいる(もっと正確な定義は、後で紹介するサイトで知ることができる)。関係者全員が、この「正常性バイアス」に陥っていると、危険性が放置される可能性が高くなるのである。

では、「正常性バイアス」から抜け出す方法は何もないかというと、必ずしもそうではない。ここでは、その方法の一つとしてコミュニケーションの問題を指摘しておきたい。
関係者の中には、危険性を察知しているメンバーが一人くらいはいるだろう。そして必要なのは、危険性を察知したメンバーが、遠慮なく周囲(他のメンバー)にそれを伝えられる「雰囲気」である。

逆に、「これは少し危ないのではないか」とか「このままにしておくと危険なのではないか」などと指摘したときに、他のメンバーが、「それは心配しすぎだよ」「そんな心配は素人が考えることだよ」「単なる想像で言ってはいけないよ」などのように、危険性を警告する発言を否定・批判するような雰囲気があると、なかなか言い出せないだろう。

以前、当ブログ記事の「事故とコミュニケーション」で、 認知心理学の観点からさまざまな事故の原因や対策を研究している海保博之氏(筑波大学教授)の提言を参考に「メンバーが自分の思いを、自由に、しかも頻繁にコミュニケーションできる環境が必要である」と書いたが、メンバーが、危険性について気づいたことを何でも言える雰囲気が大切だというのも、これと同じ趣旨である。

なお、具体的なスキルの一つとして、当ブログの「確認はヒューマンエラーへの対応策」で書いたような「確認型応答」の徹底がある。確認には、誤解を防ぐだけでなく、お互いの信頼感を育む効果があるため、何でも言いやすい雰囲気が醸成されるのである。

■「正常性バイアス」についての理解は下記のサイトが参考になる。

「防災システム研究所から「正常性バイアス防災心理

「ひろ子日記」から「『正常性バイアス』にご用心」

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