2013年3月 8日 (金)

日本列島にも旧石器時代の文化があったことを発見した相沢忠洋氏と「岩宿遺跡」

 昨日、久々に「岩宿遺跡」(我が家から西へ4Kmほどの距離)を訪れました。
 昭和21年に、地元(厳密には隣町の桐生市在住)の考古学研究者である、故・相沢忠洋氏によって、関東ローム層の中から石器が発見されました。昭和24年に、明治大学考古学研究室のメンバーと、相沢氏を含む発掘調査団により、日本で初めて、関東ローム層の中から石器が出土することが確認されました。これは、日本文化の始まりが定説よりも1万年以上遡ることを意味し、日本列島にも旧石器時代の文化があったことを証明した大きな発見でした。
 石器の発見者である、相沢忠洋氏のことは、私が小学6年生のときに、ある学習雑誌の記事で知りました。地元に、こんなにすごいひとがいたことに感動したのを覚えています。その後、著書『岩宿の発見』(講談社)を読み、発見に至るまでの経緯を詳しく知りました。その後、地元の群馬大学の学園祭で講演をお聞きする機会にも恵まれました。相沢忠洋氏は、大学で考古学を学んだのではない、いわゆる在野の研究者です。私は、その生き方に、いつも励まされています。(写真は氏を顕彰した胸像)P3070028

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2006年10月31日 (火)

「直江津捕虜収容所」跡地を訪ねて

 新潟県上越市には、〈対話法〉の普及に尽力している仲間が大勢いる。

 昨年11月、新潟市で開かれた「日本コミュニケーション学会・東北支部」の研究大会に、〈対話法〉ワークショップのファシリテータとして招かれた。その翌日、「上越〈対話法〉研究会」の仲間の案内で、直江津捕虜収容所跡地にある「平和記念公園」に立ち寄った。

 太平洋戦争の開戦から1年後の昭和17年12月に、直江津捕虜収容所(東京俘虜収容所第4分所)が設置され、オーストラリア兵をはじめとする連合軍の捕虜が収容され、最大で700人余りの捕虜が近隣の工場での労働を強いられていたということである。
 その後、戦局の悪化によって、捕虜に支給するための食料や医療品が不足するなか、昭和18年に異常寒波が襲来し、厳しい冬を越すことができなかった60人以上の捕虜が、栄養失調や病気によって死亡するという悲惨な出来事が起こってしまったのである。

 昭和20年8月15日に日本は敗戦をむかえたが、その後、日本に進駐してきた連合軍が戦争犯罪を追及するなかで、元直江津捕虜収容所の看守や軍属などの職員も容疑者として逮捕された。そして、60人以上の捕虜を死亡させたという罪で、看守のうち8名が処刑されたのである。

 この、さらに不幸な結末に至った要因の一つとして特に私の印象に残ったのが、当時の捕虜による証言である。
 たとえば、看守が捕虜の脚気の治療としてお灸をしたことが「体に火を押し付けられた」と証言され、戦時中の食糧難の中で、捕虜のためにと必死になって調達し食事に出したゴボウが、「木の根っこを食べさせられた」とされ、戦犯の証拠とされてしまったのである。

 日本と西洋の文化や風習の違いに起因するこれらの「誤解」が、直江津捕虜収容所の戦争犯罪容疑の証拠として採用されたという歴史的事実は、「誤解を防ぐコミュニケーション」を提唱する私の心に強く残った。

 現在、直江津捕虜収容所の跡地は公園となっており、敷地内には当時の資料を展示する資料館がある。また、平和のモニュメントと石碑が建立されている。
 さらに、平和を願う「上越日豪協会」などが中心となり、市民レベルでオーストラリアとの交流が続けられている。

■参考になるページ
「ささやかな国際交流のぺえじ」

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2006年10月13日 (金)

〈対話法〉における「三方よし」の理念

 〈対話法〉の理論と技法は、心理学(特にカウンセリング心理学)やコミュニケーション学を基盤としているが、その普及方法となると、モデルとなるものがなかなか見つからなくて苦慮していた。そのためか、〈対話法〉に一度でも触れる機会があった人からは、〈対話法〉の価値を認めてもらい、少しずつ輪が広がっていくのであるが、その評判や効果の割には、広がり具合が遅々としていることを不思議に思っていたのである。

 一方で、コミュニケーション不全に端を発すると思えるような事件・事故が多発している現在、それらの対策と予防の手段の一つとして〈対話法〉を役立ててもらいたいとの思いは高まるばかりである。

 先日、コミュニティケア活動支援センター事務局長の佐藤修さん(コンセプト・デザイナー/(株)コンセプトワークショップ代表)と話す機会があった。佐藤さんは、〈対話法〉と、その普及活動を応援している貴重な人物の一人である。

 これまで、どちらかというと、〈対話法〉の普及活動は、基本的に無償で行なってきた。もちろん、対話法研究所所長の浅野が、会社・学校・公的機関などに講師として呼ばれるときは、それ相応の講師料をいただくことはある。しかし、所長以外の協力者の皆さん(日本対話法研究会会員)の活動の多くは、交通費もいただかない無償での働きがほとんどだったのである(練習会の会場費程度はいただいている)。

 これが、たいへん有り難く尊い行為だという思いは、いまでも変わらない。しかし、改めて考えてみると、〈対話法〉の普及活動の目的は、「無償で行なう」ことではなく、「普及させる」ことなのである。

 このような話を佐藤さんとしているうちに、普及活動が無償で行なわれているところに、いま一つ広がっていかない原因の一つがあるのではないか、との意見をいただいた。わたしも、おぼろげながら考えていたことではあるが、佐藤さんのように、〈対話法〉に理解のある第三者の方から改めて言われたのを機に、この問題に真剣に取り組もうと考える昨今である。

 なんらかの社会的活動や市民活動をするとき、それが新しい活動であればあるほど、有償で行なうのか無償で行なうのかという難しい選択に直面する。これについて論ずるのは、それだけでも大変なことであるが、〈対話法〉の普及活動も、この問題の渦中にあったと言えよう。

 話の中で、佐藤さんが、ふと、「三方よし」という言葉を漏らした。これは、近江商人の経営の心得・理念として知られる、「売り手よし、買い手よし、世間よし」のことである。〈対話法〉の普及活動は、商人が物品を販売するのとは趣が異なるものの、「三方よし」という理念には、おおいに学ぶところがあると思う。

 〈対話法〉の場合、「売り手よし」とは、講師(世話人と呼ぶことが多い)の物心両面での満足(利益)のことであり、「買い手よし」とは、受講生(参加者)の「心の」満足(利益)のことになる。そして、「世間よし」は、公共の利益(社会貢献)という意味合いである。〈対話法〉では、この理念をモデルとして普及活動を進めていきたいと考えている。

 そして、その第一歩として、東京〈対話法〉研修会を企画した。この形が、有償での普及活動のモデルの一つになれば幸いである。もちろん、時と場合に応じて、従来のような無償での活動も続けていきたい。

 思えば、「自分の考えや気持ちを言う前に、相手が言いたいことの要点を、相手に言葉で確かめる」という〈対話法〉の原則自体が、この「三方よし」の理念にかなっている。どちらかが一方的に話したり聞いたりするのではなく、お互いの「発言する権利」を尊重し合うこと、そして、その際に、自分の発言よりも、相手の話をきちんと聞くことを、まずは優先するのである。そして、この原則には明記されていないが、この原則に則った対話による良好な対人関係が、社会における健全な経済活動や福祉の発展に貢献するのである。これは、コミュニケーションにおける「三方よし」の理念の実現の姿の一つなのではないだろうか。

【参考】「三方よし研究所」というのが滋賀県彦根市にある。

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2006年9月29日 (金)

「JR東日本総合研修センター」訪問

■お知らせ:これまで、ブログ「カウンセリングと対話法を語る」に書いてきた〈対話法〉についての記事は、「対話法入門講座」に移転しました。

9月26日に、私も会員になっているNPO法人「失敗学会」のメンバーと「JR東日本総合研修センター」を訪問しました。福島県・新白河駅からバスで10分くらいの場所にあります。

このセンターは、社員の研修のために設置されたものです。その中に、今回の訪問の主目的である「事故の歴史展示館」があります。「この施設は、過去の事故を忘れることなく、尊い犠牲の上に得られた貴重な体験として大切に引き継ぎ、安全に対する基本姿勢である『事故から学ぶ』ことを目的」(「事故の歴史展示館」パンフレットから引用)として平成14年に開設されました。

そこでは、これまでに起こった大きな鉄道事故(追突、脱線、感電、災害、列車火災など)の概要と対策が、展示パネル、ビデオ、模型などを使って紹介されています。

私は、特に、コミュニケーション・エラーが関った事故に関心がありました。その一つの例として、保線関係者のちょっとした連絡ミスや確認忘れなどが、悲惨な死亡事故につながった事例が紹介されていました。

私は、〈対話法〉を通して、「確認の大切さ」を提唱していますが、「いくら確認をしても、それだけでは防げない事故」や「確認さえ忘れてしまう状況」があることを、実際に起こった「事故の記録」を通して改めて知ることができました。

コミュニケーション・エラーを完全になくすことはできません。ですから、これらの事故を防ぐには、たとえば「自動列車停止装置(ATS)」などのようなメカニズムを使った対策を講じる必要があるわけです。

そして重要なことは、「確認という行為」が全く無力なわけではないということです。日常業務における「ヒヤリ、ハッと」体験を関係者に報告し、その体験をメンバー間で共有しやすい環境をつくるには、「確認型応答」を中心とする〈対話法〉の原則が有効だからです。

要するに、「確認」と「メカニズム」を適切なバランスで併用することが、事故を防ぐ最良の方法なのでしょう。

なお、NPO法人「失敗学会」では、分科会の 『失敗体験ネットワーク』のメンバーが全国の失敗体験に関連する施設を調査して、「失敗体験施設名鑑」として情報をデータベース化していますのでご覧下さい。

参考記事:
事故とコミュニケーション
確認はヒューマンエラーへの対応策
危険性を指摘する発言が許される環境
  

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2006年8月29日 (火)

コーチングと〈対話法〉

一昨日(8/27)は、新潟県上越市の上越市市民プラザで開かれた「くびき野市民活動フェスタ2006」という催しに参加してきました。日本対話法研究会の会員である、上越〈対話法〉研究会のメンバーが、イベントの一つとしてワークショップを企画していたからです。

今回のワークショップがユニークだったのは、なによりも、日本コーチ協会日本海チャプターとの共催だったということです。
「聴くことから始めよう」を共通のテーマとして、傾聴に焦点をあてたワークを行ないました。
前半は上越〈対話法〉研究会のメンバーが、後半は日本コーチ協会日本海チャプターのメンバーがファシリテータとなって、それぞれのスキルの説明と基本的な練習である体験型のワークが行なわれました。

私は、コーチングについては、本で読んだだけだったので、私にとっても貴重な体験になりました。

コーチングでは、傾聴に加えて、クライアントに適した質問をする(訊ねる)ところに特徴があります。それによって、クライアント自身がもっている「こたえ」を導き出していくのです。

私も、参加者と2人組でコーチングを体験してみて、自分の「こころ」と「あたま」が活性化していくのを感じました。ただ、ちょっと喋りすぎて、のどが疲れましたが……。

コーチングのデモンストレーションを見ていて気づいたのは、想像していた以上に、傾聴スキル(〈対話法〉では確認型応答と呼んでいるスキル)を使っていたということです。

クライアントに適した質問をするには、相手の発言をできるだけ正確に理解しなくてはなりませんから、きちんと相手の話を聞くことが、やはり第一に必要なのだということを、コーチングから改めて学ぶことができました。

上越〈対話法〉研究会が開いている定例の練習会には、プロのコーチの方も参加しています。
コーチは、傾聴スキルだけでなく、そのさらに先のスキルを身に付けているので、どうして、傾聴スキル(確認型応答)だけを練習する〈対話法〉の会に参加しているのか、常々不思議に思っていたのですが、今回、コーチングを体験してみて、その理由がよくわかりました。

〈対話法〉は、傾聴スキル(確認型応答)だけを徹底的に練習するので、コーチの方にとっても、傾聴スキルをさらに磨く場になっているのでしょう。

ところで、「こころ」が十分に元気で、もう一歩先に踏み出したいという人にとっては、〈対話法〉の確認型応答のみでなく、コーチングのように適切な質問をすることによって、その人が自ずから活性化していきます。

イベントが終了してから、当日参加して下さった、日本海チャプター代表の木伏あづささんと、このような話をしましたが、これからも、〈対話法〉とコーチングで交流を深めて、互いの特徴を学びあっていきたいと思いました。

■主催者による概要報告がありますので、ご覧下さい。
 なお、コーチの立場からの感想としては、「上越でコーチングと対話法」が参考になります。

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