2015年5月11日 (月)

〈対話法〉の新しい学習法・アートde〈対話法〉教室

アートde〈対話法〉教室

「アーツ前橋」(群馬県前橋市)の展示作品を見ながら、参加者全員でコミュニケーションのコツを学ぶ〈対話法〉の新しい学習が、平成27年2月から始まりました。
美術作品を鑑賞しながら、家庭でも職場でも明日から使える「誤解を防ぎ相互信頼を深めるコミュニケーションのツボ」〈対話法〉を、参加者同士で学び合っています。

このイベントに参加するためには、美術の知識は一切なくて大丈夫です。知識に頼らず対話を重ねながら鑑賞する「対話型美術鑑賞(VTS)」をツールに、〈対話法〉(自由な発言を促進するコミュニケーション技法)をレクチャーします。

講師&ファシリテーター:浅野良雄
(対話法研究所所長、国際リスニング学会会員、日本心理学会認定心理士)
企画協力:遠山衣美(あそびば☆ぐんま代表)
会場:アーツ前橋 ※「アーツ前橋」が主催するイベントではありません。
参加費:無料
参加資格:18歳以上
主催:対話法研究所 http://www.taiwahou.com/ 後援:日本対話法研究会 http://www.taiwa.org/

内容の概要
○アイスブレークと自己紹介。
○全体の進め方、〈対話法〉の概要、本日の「対話型美術鑑賞」のやり方を説明。
○「お薦めのアート」探し。(各自で館内を一巡して、自分が面白いと思うアートを探す)
○ファシリテーターがナビゲーター役のモデルを示す。
○役割を交替しながら対話型美術鑑賞。自分の「お薦めのアート」の前でナビゲーター役をする。
○振り返り。〈対話法〉について質疑応答。

〈対話法〉とは:従来からある共感や傾聴の技法を分かりやすくして、1994年に浅野が発案した、「確認型応答」を重視するコミュニケーション技法です。コミュニケーションの基本なので、場面・職種・立場などを越えて使えます。

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2006年10月13日 (金)

〈対話法〉における「三方よし」の理念

 〈対話法〉の理論と技法は、心理学(特にカウンセリング心理学)やコミュニケーション学を基盤としているが、その普及方法となると、モデルとなるものがなかなか見つからなくて苦慮していた。そのためか、〈対話法〉に一度でも触れる機会があった人からは、〈対話法〉の価値を認めてもらい、少しずつ輪が広がっていくのであるが、その評判や効果の割には、広がり具合が遅々としていることを不思議に思っていたのである。

 一方で、コミュニケーション不全に端を発すると思えるような事件・事故が多発している現在、それらの対策と予防の手段の一つとして〈対話法〉を役立ててもらいたいとの思いは高まるばかりである。

 先日、コミュニティケア活動支援センター事務局長の佐藤修さん(コンセプト・デザイナー/(株)コンセプトワークショップ代表)と話す機会があった。佐藤さんは、〈対話法〉と、その普及活動を応援している貴重な人物の一人である。

 これまで、どちらかというと、〈対話法〉の普及活動は、基本的に無償で行なってきた。もちろん、対話法研究所所長の浅野が、会社・学校・公的機関などに講師として呼ばれるときは、それ相応の講師料をいただくことはある。しかし、所長以外の協力者の皆さん(日本対話法研究会会員)の活動の多くは、交通費もいただかない無償での働きがほとんどだったのである(練習会の会場費程度はいただいている)。

 これが、たいへん有り難く尊い行為だという思いは、いまでも変わらない。しかし、改めて考えてみると、〈対話法〉の普及活動の目的は、「無償で行なう」ことではなく、「普及させる」ことなのである。

 このような話を佐藤さんとしているうちに、普及活動が無償で行なわれているところに、いま一つ広がっていかない原因の一つがあるのではないか、との意見をいただいた。わたしも、おぼろげながら考えていたことではあるが、佐藤さんのように、〈対話法〉に理解のある第三者の方から改めて言われたのを機に、この問題に真剣に取り組もうと考える昨今である。

 なんらかの社会的活動や市民活動をするとき、それが新しい活動であればあるほど、有償で行なうのか無償で行なうのかという難しい選択に直面する。これについて論ずるのは、それだけでも大変なことであるが、〈対話法〉の普及活動も、この問題の渦中にあったと言えよう。

 話の中で、佐藤さんが、ふと、「三方よし」という言葉を漏らした。これは、近江商人の経営の心得・理念として知られる、「売り手よし、買い手よし、世間よし」のことである。〈対話法〉の普及活動は、商人が物品を販売するのとは趣が異なるものの、「三方よし」という理念には、おおいに学ぶところがあると思う。

 〈対話法〉の場合、「売り手よし」とは、講師(世話人と呼ぶことが多い)の物心両面での満足(利益)のことであり、「買い手よし」とは、受講生(参加者)の「心の」満足(利益)のことになる。そして、「世間よし」は、公共の利益(社会貢献)という意味合いである。〈対話法〉では、この理念をモデルとして普及活動を進めていきたいと考えている。

 そして、その第一歩として、東京〈対話法〉研修会を企画した。この形が、有償での普及活動のモデルの一つになれば幸いである。もちろん、時と場合に応じて、従来のような無償での活動も続けていきたい。

 思えば、「自分の考えや気持ちを言う前に、相手が言いたいことの要点を、相手に言葉で確かめる」という〈対話法〉の原則自体が、この「三方よし」の理念にかなっている。どちらかが一方的に話したり聞いたりするのではなく、お互いの「発言する権利」を尊重し合うこと、そして、その際に、自分の発言よりも、相手の話をきちんと聞くことを、まずは優先するのである。そして、この原則には明記されていないが、この原則に則った対話による良好な対人関係が、社会における健全な経済活動や福祉の発展に貢献するのである。これは、コミュニケーションにおける「三方よし」の理念の実現の姿の一つなのではないだろうか。

【参考】「三方よし研究所」というのが滋賀県彦根市にある。

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