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2017年12月27日 (水)

新幹線「のぞみ」の台車に亀裂が見つかった問題に思う

博多発東京行き新幹線「のぞみ34号」の台車に亀裂が見つかった問題ですが、報道によると、その原因のかなりの部分に、係員間の「伝達ミス」と「思い込み」が介在していたようです。

私は、鉄道会社から依頼されて、助役・運転士・車掌・運行指令員等を対象として、ヒューマンエラーを予防するコミュニケーション技法の研修を行なうことがあります。
その中で、コミュニケーション・エラーを主因とする過去の事故例として、次の2件を紹介することが多いです。

○JR西日本東海道線塚本駅構内救急隊員死傷事故(平成14年11月6日夜)
○近鉄大阪線東青山駅構内列車脱線事故(平成21年2月27日早朝)

そして、ヒューマンエラーの予防のために、次のようなことをお話しします。

○ 想像・推測と錯覚は人間の認知機能の「表裏」なので、エラーを完全にゼロにすることは不可能。
○ 判断に迷ったときは作業を中止する。
 ※〈対話法〉の原則(話を先に進めない)と同じ。
○ 小さなトラブルやミスが大きな事故にならないためには、異変に早めに気づくことが大切。しかし、自分ひとりで気づくことは難しいため、周囲の複数の目が必要。
○ 「何かおかしいぞ」という、個人の気づきを尊重する職場の雰囲気(なんでも言える関係)が大切。
○ インシデントや危険箇所の報告、改善策の提案。 
※これらができるには、メンバー間の信頼関係や、話しやすい職場環境が重要。
○ 伝達ミスの予防:分からないことに対する敏感さ(不明な点や曖昧な言葉への気づき)と寛容さ(分からないという気持ちを大事にする)が大切。分かったと思ったとき、思い込みの可能性が生じる。
○ 心構えを説くだけでなく、共に実践(訓練を含む)することが大切。
このような教育を現場で行うことにより、今回のような重大インシデントがなくなることを願っています。

特に、今回の場合は、「判断に迷ったときは作業を中止する」ということで言えば、一刻も早く、新幹線の運行をストップして、少なくとも「目視」で点検すべきだったと思います。

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